くずみーのくずかご

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heddo-hon.autumn 視聴の感想

◆はじめに

・今本作品の存在を知った人は視聴できない

・ネタバレ注意

・批判や批評の意図はない

 

 「ヘッド本。秋」とは、ウィズプラス商事株式会社が提供する、配信による映像および音声作品。配信期間は2023年11月10日~19日(この期間だけ視聴することができる)。チケット販売期間は10月10日~11月9日までであり、私がこの記事を書き、アップロードしている11月13日以降に存在を知った方は視聴することができないのでご了承いただきたい。

 また、本記事では作品の内容をがっつり紹介するつもりはないが、多少は触れるし、何がネタバレになるかは人それぞれなので、視聴予定のある方はまず視聴してほしい。

 加えて、私は文章を書くことを趣味の1つとしており、感想を書きたいだけで誰かや作品を批判する意図は一切ないので、ないとは思うが万が一関係者の方や本作品に思い入れの強い方がこの記事を目にしていらっしゃる場合はその点ご留意いただきたい。

 

 

 

 

 

 

ーーー以下スペースを空けてから内容に触れるので注意ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆全体的な感想

・難しい

・楽しみ方はこれで合っているのか

 

 全6話を視聴し終わった率直な感想としては、「難しい」だった。私にはこの作品を1度で咀嚼しきる力は備わっていなかった。確かに読書は習慣づいていないし、映画もそこまで多くは見ないので、読解力が高くない可能性は大いにある。幸い本作品は期間限定の配信によるものということで、期間内なら何度も見返すことができるため、2週目を見て咀嚼し切れるか試してみたいと思っている。

 本作品は短編がいくつか連なったいわゆるオムニバス形式の作品となっており、朗読劇である。ただし、音声のみの作品というわけではなく、それを読む出演者の様子が動画となっていることに加えて、一部映像が挿入される演出が行われることで映像作品ともなっている。

 私は出演者である「詩野」さんのファンであり、詩野さんがきっかけでこの作品を知り、視聴に至った。本作品はいわゆる私にとっての”推し”が出演している映像作品であり、推しの姿や演技を見聞きすることができたため楽しむことはできたし、チケット購入に後悔などはない。しかし、これは本作品の本質なのだろうか?もし私が出演者関係なく純粋にこの作品を視聴したらどう感じるだろうか、と考えたとき、少し心に陰りを覚える。

 

 

◆ストーリーの話

・世界観に置いて行かれ迷子になってしまった

・伝えたいことを受け取ることができなかった

 

 開幕でネガティブな話をしてしまったが、その主な原因は私がストーリーを理解しきることができなかったためだ。重ねてになるが、別に批判をしたいわけではない。私の認識では、作品は作り手(ここではストーリーの作り手を指す)の”表現”であり、たまたま私がそれに合う感性を持っていなかっただけの話だ。

 本作品は先述の通りオムニバス形式であるが、オムニバス形式というと、「まったく異なるいくつかの物語」か、「いくつかの視点から見た1つの物語」であることが一般的であるように思う。前者は星新一に代表されるようなショートショートのようなもの、後者はドラゴンクエストⅣに代表されるような勇者視点と各従者視点で構成されるようなものをイメージしてもらえば良いと思う。本作品は、どちらなのだろうか。

 冒頭、本作品についての世界観が提示され、その後朗読が始まる。これは朗読劇なのか、朗読劇をしている劇なのか。我々がイメージする一般的な朗読の映像ではなく、そこには世界観があった。普通ではなかったのだ。こんなに長い劇中劇はきっとないので、これはこういうものなのだろう、そう思えるまでには時間がかかった。

 途中、場面が切り替わる。人が一部入れ替わる。しゃべり方が変わる。呼ばれる名前が変わる。あぁ、違う話になったのだ。この人達は顔は同じだが先ほどとは違う人達なのだ。これが第2話だろうか。

 これは一体なんの話なのだろうか。どの視点、どの世界観の話なのだろうか。最初の話とはまったく関係ない話なのか?作品の世界に入り込めず迷子になる。これはなんとなく「ノックスの十戒(ミステリ作品におけるタブー)」を犯しているような気がするな、などと余計なことばかり考えてしまう。この世界観で進めていくのか?ファンタジーとリアル、どっちの頭でいればいいんだ?少し混乱する。

 ある話で登場した人が、別の話でまったく違う世界観の中で登場した。いよいよ難しい。

 時間をおいたことによってわからなくなるということを避けたかったので、全話一気に駆け抜ける。最初の世界観が戻ってくる。ということは、この作品はすべて1つの世界観だったのか…?

 そのまま作品の終わりへ。「えっ、終わっちゃった」となってしまった。この作品の「伝えたいこと」を受け取る前に終わってしまった。どういうオムニバスだったのだろう。

 もしかしたら、私の身構え方が違ったのかもしれない。ペルソナシリーズ(ATLAS)のような伏線やストーリー、もしくは「一生好きってゆったじゃん」(横槍メンゴ)のような、メッセージ性の強烈なミニストーリーを受け止めるつもりの頭でいたが、「風ノ旅ビト」(ソニーインタラクティブエンターテインメント)のような、非常に大きな世界観の中に、小さなメッセージカードが添えられた作品だったのかもしれない。もしかして、「ヘッド本」と名の付く作品は夏にも出ているので、これを視聴していたほうがわかりやすかったのだろうか。

 少なくとも、1週目を終えた時点の私には、明言することはできない。もう少し、初心者向けのストーリーだとうれしかったなぁと思った。もしくは、ストーリー理解を助ける何かしらの解説などがあるとより助かると思った。

 良くない書き方ばかりしてしまったが、中盤の「恋人の様子を見る話」(ネタバレしないようあえて変な言い方をしている)はストーリーとして好きだった。

 

 

◆重箱の隅をつつきたいだけの話

 ここがちょっと気になったなぁという所を書いていく。

 

バイノーラル録音の使いどころ

 本作品は「ヘッド本」の名の通り、ヘッドホンを着用した視聴が推奨される。というのも、本作品はバイノーラル録音(立体音響の1種で、音の聞こえ方がリアルなもの。右にいる人の声が右から聞こえるなど。耳舐め音声や催眠ASMRなどで大活躍の技術。)で収録されており、例えば話者によって声の聞こえる方向が異なる。ただ、この技術が強く生かされた所はどこかと問われると、私はエンディングであると答えてしまうだろう。

 本編においてもすべてバイノーラル録音が用いられており、私は両耳にイヤホンを装着して視聴したのだが、声が聞こえてくる方向に必然性が薄いと思ってしまった。つまり、「どうしてこっちから声が聞こえてくるのだろう」と思ってしまったのだ。この録音方式の強みの1つである音声の移動(ex.右にいた人が話しながら左に移動するなど)もあまり使用されておらず少し残念だった。

 

・カメラ(自分)は誰なのか

 作中で、しばしば演者がカメラ目線になるシーンがある。この際、こちらに向かって話しかけられているような状態になるが、作中に私は存在していないので、「この人はなぜこっちを見ているのだろう」と気になってしまった。コミカルな表現であれば自然と受け止められるが、作品を通して静かな雰囲気であるため、少し浮いて見えてしまった。

 

・音ズレ、セリフミス

 これは環境によるものであったり、私の認識違いである可能性もあるため、特に鵜呑みにしないでいただきたいが、序盤9分あたりのセリフに音ズレがあるような気がする。シーンが切り替わると直るので何かしらの同期によるものだろうか。中盤~後半にセリフの微妙な言い淀みも確認した。別にこれにどうこう言いたいわけではなく、「細かいところまで見ている自分」としてイキる材料にしていこうと思う。演出だったら大変申し訳ない。

 

・演者6人中5人がXX

 内容は伏せるが、演者6人中5人がXXする、という話が作”外”で登場する。XXしない一人は何かあったのだろうか。裏に厳しい世界があるのではないかと勝手に想像してしまい少しつらくなった。

 

・作中歌の音量

 ちょっとセリフ音量に対して大きいかも…でも人によるか。

 

 

◆推しの話

 散々暗い話を書いてきたが、推し活という点では私にとって有用な作品であった。

 

・推しの演技

 私の中で推しの演技を見ることができた最も長い作品だった(2023年11月現在)。本職を目の当たりにすることができた。気だるげというか、悟っているというか、そういう役が非常に合っていて好きだった。

 

・変わる衣装

 我が推しだけ衣装チェンジの回数が多い。黒も白も青も似合う。特に黒で落ち着いた話をしている回が話し方も含め好きすぎる。

 

・眼鏡ありがとう

 眼鏡ありがとう…

 

・手

 手の震えは私の幻覚かもしれないし緊張によるものかもしれないし、演技かもしれない。幻覚であればごめんなさいだし、緊張によるものであれば人間的で親近感。演技なのであればこんな細かいところまでやるのかという感心。あと指が細くて長くて美しい。

 

・リップノイズ、ペーパーノイズの少なさ

 リップノイズは話し始めなどに口を開くときの音、ペーパーノイズは台本などをめくるときの音である。本作品はヘッドホンやイヤホンで視聴するため、こういった細かい音にも敏感になるが、我が推しはこのノイズが有意に少ないと感じた。推しであればリップノイズすら愛する対象ではあるのだが。

 

・表情

 途中で演者の映像が挿入されるが、他の演者がニコニコしている中、推しは無表情。だがそれが良かった。また、作中では台本を読むために目線を下げるのだが、伏し目がちになる様が非常にアンニュイで心を掴まれた。

 

・声

 推しの声は特徴的だ。他の人よりも息成分が少なく、声成分が多い。声質的にはソプラノだが、作中ではアルトのような穏やかな話し方をする回がある。その華やかさと落ち着き、そしてどこか冷たさの混ざったそれがどうしようもなく魅力的であった。

 

・エンディング

 わかっていらっしゃる。バイノーラル録音を生かしてくれて本当にありがとう。

 

 

◆終わりに

 怒らないでください。敵意はありません。