くずみーのくずかご

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ヒーローの変身中にあなたは攻撃できるか

 ブログは書きたいときに書くに限る。ということで書きたいことを書こうと思う。
 内容は「ヒーローの変身中になぜ攻撃しないか問題」について。たぶんネット上では既に答えは出ているのだろうけれど、自分の言葉で考察したくなった。

 

 結論から言うと、「変身中に攻撃することは危険」だからだ。敵役もやられたくないためにそのことはよく考えている、というのが僕の説だ。

 変身する側(もしくは変身アイテム製作側)からして、変身中というのは最も狙われたくない瞬間である。というのも、

・変身後の戦力を得る前にやられてしまう
・精密機器の作動中であるので強制的に動作が中断されると不具合が起きる可能性がある

といったような問題点が予想されるためである。

 

 変身前については変身アイテムでは守りようがなく、変身後は力を得られ、アイテムそのもので守る必要がないので、変身の最中こそ重点的に守るべきであると考えられる。
 

 そこで変身アイテムの設計者は変身の最中を重点的に守るシステムを設計することが往々にしてあるのだ。例えば仮面ライダーシリーズで言えば「仮面ライダー剣」等があげられる。“剣”では変身の際にベルトのバックルから強力なバリアのようなものが出て、敵を跳ね飛ばす。変身者はこれをくぐることによって変身が完了する。おそらくあのバリアには裏表があり、一方通行になるように設計されているのだと思う。戦闘中ずっとアレ出しておけよと思うかもしれないが、それができるならきっとその機能を実装しているだろう。おそらくは高エネルギーのものを射出することで敵をはじいて変身者を守っているので、エネルギーが足りないのだろう。
 

 スーパー戦隊シリーズプリキュアシリーズでは変身アクションに合わせて特有の技が発動することがよくある。例えば「ハピネスチャージプリキュア」では白雪ひめことヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイは、変身時に得意技である「プリンセス・弾丸マシンガン」の1発を放つ。プリキュアシリーズでは変身時の決め台詞やポーズが当人たちの意思ではない(意図してやっているのではなくいつの間にか体が動いていた)という描写がしばしばある(例:初代「ふたりはプリキュア」第1話など)ことから、変身時の技発動は変身アイテム設計者もしくは上位存在の意思により、変身中が守られていることが推測される。

 

 また、スーパー戦隊シリーズなどでは、ストーリーが中盤~終盤に差し掛かったくらいで、変身バンク無しで変身することがよくあることから、(テレビの演出上長く見えるが)本来変身に係る時間は非常に短い可能性がある、という見方もできる。不利な時間を極力短くするという方法はわかりやすく非常に合理的である。

 少し異なるパターンではあるが、「仮面ライダークウガ」の初(正確には2回目であるが自分の意思で、かつマイティフォームに変身するのが初)変身シーンでは、襲い掛かってきた相手に対して腕だけを変身させてパンチを繰り出し、そのまま部分ごとに変身していき完全に変身を果たした。

 このように、変身にかかる時間を短くするということは、変身による強化形態に即座に移行することにより、変身者の隙を最小限に抑えるとともに、変身前を狙ってきた敵にカウンターを入れられる手法であるともとらえることができる。

 

 

 話は逸れるがここで「最初から強化フォームでボコればいいじゃん問題」にも触れておきたいと思う。この問題は、ストーリーの途中でより強い変身形態が登場したにも関わらず、戦闘が始まると最初は通常形態で戦い、ある程度傷ついてから強化フォームに移行するようなことがよくあるがこれは合理的であるかどうか、という問題である。こういった問題は変身ヒーローシリーズではよく出てくる問題である。「仮面ライダーウィザード」では最初からドラゴンの力を借りることはほぼないし、「Go!プリンセスプリキュア」で最初からモードエレガントで戦うことは無い(と記憶している)。

 

 ちなみに、強化フォームへ移行しない理由が合理的である場合はこの問題に含まれない。

 

・強化フォームにデメリットもある場合(「仮面ライダー剣」のキングフォーム等。体の具合的に極力なりたくないはず。)
・強化フォームが戦況を選ぶものである場合(「仮面ライダーW」のファングジョーカー等。フィリップを場に出すのが得策ではないことが多々ある。)
・強化フォームへの移行が自分の意思のみでは不可能な場合(「ふたりはプリキュア」のレインボーブレス装備等。ポルンの意思が必須。)

 

というような場合は「最初から強くなっとけよ」というツッコミが発生しないことが分かっていただけると思う。普通に考えれば余計なダメージを食らう前に強いフォームになってしまえばいいのである。「仮面ライダー鎧武」では、主人公は段階的に強化フォームになっていくのだが、それ以外の登場人物は基本的に、「強い変身ベルトが手に入ったらそれしか使用しない」というスタンスである。

 

 さて、それでは最初から強化フォームにならないヒーロー・ヒロインたちは一体何を考えているのだろうか。私は、そこにも理由が存在するはずであると考えている。何故なら、彼らも人間だからである。考えて行動するためには何かしらの判断基準や理由が必要であるのだ。
以下に、私が考えうる「最初から強化フォームじゃない理由」を考察してみたいと思う。

 

●使い勝手の問題
 強化フォームは基本的に物語の中盤~終盤に手に入ることが多い。それまではずっと通常フォームで戦闘を重ねてきているのでかなりの経験値がたまっているはずだ。単純にフォームを武器としてとらえた場合、単純に上昇する攻撃力だけで言えば強化フォームの方が上であろうが、通常フォームの方が使い慣れているために、結果的に安定した戦闘力が得られるという場合や、手癖もあってまずはそちらに変身するという場合が考えられる。最新の新しい運動靴を買ってもなんだかんだまずは使い古した靴を履いて様子を見ちゃうようなあの感じである。なじみが深いために安心感があり、幅広い対応ができるため、強化フォーム含めどのフォームへ移行すれば戦闘を有利に進められるかの見極めもしやすいのではないだろうか。

 

●まずは様子見をしたい
 前項で他フォーム移行のための見極めが出たのでこれも追加しておきたい。基本的に他フォームへの移行がほぼ前提(必要ない場合もあるが)となっており、適したフォームを見極めるためにまずは最もバランスの取れたフォームに変身することが考えられる。「仮面ライダーウィザード」ではこういったことがよくみられたように思う。属性別などフォームが多いヒーローがこういった思考をしやすいのではないだろうか。

 

●強化フォームへの変身にひと手間かかる
 シームレスに強化フォームに移行するヒーローを私は見たことがない。大抵は変身アイテムに対してアタッチメントやキーアイテムを作用させるなど1アクション挟む。このため、目の前に敵がいる状況で素早く戦闘力を得たい場合、その1アクションを省略して戦闘に入り、解決できればそれでよし、解決できなければ強化フォームに頼るというやり方が考えられる。情熱先行型の主人公等がこういったパターンであると思われる。

 

●手の内を隠したい
 戦略家タイプに多いのがこれではないだろうか。一気に相手に自分の全力を見せてしまうと、それを攻略されたときに太刀打ちできなくなってしまう。そのため、通常フォームで倒せればそれでよし、ダメなら仕方なく奥の手を出すような形で強化フォームに移行するという考え方。

 

●一気にたたみかけて倒すため
 通常フォームでできるだけ相手の体力を削り、あと一歩というところで強化フォームに移行、相手に攻略の隙を与えないままパワーで倒すスタイル。プリキュアシリーズに多い。野球のピッチャーもこういう考えに基づいて先発→中継ぎからの“押さえ”を用意する。弱らせることで強化フォームの必殺技を当たりやすくし、勝率を上げる。

 

 とりあえずパッと思いつくのはこれくらいであるが、他にもあるかもしれない。

 

 話題を戻そう。ここまで
「ヒーローの変身中になぜ攻撃しないか問題」
「最初から強化フォームでボコればいいじゃん問題」
の2点を論じてきたが、これらは一見非合理的に見えるが考察してみると合理的な理由が複数浮かび上がった。作品によって明言されている場合とされていない場合(ほとんどの場合はされていない)があるので、明確なエビデンスをもって明言することはここではできないが、登場人物たちが明確な意図をもって戦略的に行動している可能性は示唆されていると思う。敵役も戦闘のプロであるため、変身を阻止できるのであればそれに越したことはないが、それが確実に遂行できる状況ではない場合、変身中に手だしをすることには危険が伴うということを心得ているのではないか。

 

 剣の達人に対して、剣を一切抜かせなければこちらの勝ちは濃厚になるが、ひとたび剣を鞘に納めた状態から、抜刀のための(居合の)構えを取らせてしまうと状況は一転、近づくとカウンターで一撃必殺を食らう可能性が生まれるのは想像に難くないはずだ。我々の住む世界には残念ながら変身アイテムというものはまだ存在していないが、それが存在する世界では変身という行為は納刀からの居合と同じ意味合いを持つのかもしれない。