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【ネタバレ有】実写映画版ハガレン感想

※この記事には実写映画版ハガレンに関することが書かれています。ストーリーを書きなぐったりするつもりはなく、極力未視聴の方の楽しみを奪うことのないよう記事を書きますが、ネタバレの基準は人それぞれなのでまずはぜひ映画館でハガレンを見られることをおすすめします。

 

人は何かの犠牲なしに何も得ることは出来ない。

何かを得るためには、同等の代価が必要となる。

それが、錬金術における等価交換の原則だ。

その頃僕らは、それが世界の真実だと信じていた

 

・・・

 

 “それ”が決まってから、僕はずっと心待ちにしてきた。“約束の日”の訪れを。

 12月1日……76年前に日米交渉が決裂し、日本が第2次世界大戦の戦火に身を投じることが決まったのと同じ日に、2017年の現代でも新たな争いの火種が本格的に炎上し始めることとなった。

 そう、この日は「鋼の錬金術師」の実写化映画が公開される日であった。主人公のエドワードをジャニーズの人が演じ、弟のアルフォンスはフルCG。脇をウインリィ役で本田翼、マスタング役でディーン・フジオカ、ショウ・タッカー役で大泉洋などが固める。ロケ地はハガレンの舞台がヨーロッパということもあり、本場イタリアという力の入れ方である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャストがオール日本人にも関わらず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハガレン月刊少年ガンガンを救ったと言われるほどの大人気ダークファンタジー漫画であり、ハガレンが青春の一部であるという人も多いであろう。僕もその一人だ。「好きな漫画を挙げて」と言われればまずハガレンの名前を出す。原作はもちろん全て持っているし、ハガレンの絵もたくさん描いた。1期の映画も見に行った。アニメのシナリオブックも全巻揃えたしパーフェクトガイドブックも持っている。小説は何度も読み返した。PS2版のゲームは3作やったしGBA版もクリアした。Wii版はWiiを持っていないのに買った。

 そんなハガレンの実写映画化が決まったというニュースが発表されたとき、誰しもがこう思っただろう。

 

「無理だろ」「またクソ映画か」

 

 実際このニュースを知ったファンは阿鼻叫喚。しかも来場者特典としてハガレン0(新作ストーリー)がもらえるということで「人質だ」「これが等価交換か」などという声も多く上がった。

 

 先だって行われたジャパンプレミアでの先行公開でも悪評が噴出。その後なぜか急に高評価のレビューが増えたと思ったら明らかに日本語の不自由な高評価レビューが連なっており、火消しの跡があからさますぎるなど、公開日前から話題が尽きない。

 

 そんなハガレン実写化であるが、僕はその公開日を楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

 そう。僕はクソ映画が好きなのだ。

 好きといっても本格的に苦痛な映画までは見ていないライト層であるが。

しょうもなさやどうしようもなさを孕んだ、出来に笑えるクソ映画が好きな僕から見て、ハガレンの実写化は“見えている地雷”と形容してもいいほどの危険さをまとっている最高にスリリングな作品に感じられ、楽しみでしょうがないものだった。

 ラスト役の松雪泰子やグラトニー役の内山信二などはビジュアルだけ見てもハマっているので、動くとどうなるか単純に楽しみな部分もある。

 

 そんなこんなで、僕はついに約束の日、12月1日を迎えることとなった。僕は公開日当日に映画館に滑り込んだ。

 

【ここから視聴しての感想に入ります。未視聴の方は映画館へ。】

 

 

 映画が始まる。大自然蒸気機関車が写る。綺麗だ。ハガレンの世界だ。

 と、映画に没入していこうとするその時だった。画面に突如現れる金髪の男児2人。

 「あっ、ヤンキーのギャルママが育ててる男の子だ。」

 と思ったのもつかの間、錬金術を使ったあと母親のもとへ駆け寄った。名をエド、アル、というらしい。僕は知っているぞ。この映画の主人公だ。

 かくして開始1分から視聴者厳選が始まる波乱の幕開けとなった。人体錬成のシーンも描かれるが「あれ?こんなだっけ?」となる。クソ映画臭がしてたまらない。

 

 舞台は青年期へ。敵役との攻防戦が描かれるのだが、「なんでお前一人やねん」というツッコミがずっと頭をめぐる。どう考えても仲間がいるはずの敵役だったがなぜか一人。なんで?

 序盤の攻防戦は錬金術がどんどん使われるのだが、その表現は非常に綺麗で、CGを節約することなくふんだんに使っていて圧倒された。こんなに綺麗に違和感なく錬金術が表現できるようになったんだ、と素直に日本のCG技術に驚きを覚えた(ただこの映画全般に言えることだが、錬成光があまり表現されていない部分は気になったところが残念)。モノが実物より実物らしくなっている。撮影にCGは使えないので全て無を相手に演技したのかと思うと流石だなぁと思う。

 原作と同じ角度でシーンが再現されているところもあり、原作愛が感じられた。「あっ!1巻のあのコマじゃん!」となる部分は素直にテンションが上がる。

 

 すごい!アルが100%原作準拠だ!金属製の鎧の反射や映り込み、その場の明るさ等すべてが違和感なく表現されている。面白CGではなく実際にそこにいるのだ。完璧すぎて他が実写なことや釘宮ボイスでないことに違和感を覚えるレベル。

 

 ここで軍の人が出てきた。大佐だ、かっこいいな。あとこっちの人はコスプレの人かな?いや違う、ホークアイ中尉だった。なんかすごいコスプレ感だ。なんで?

 

 軍部でやり取りをしているとき、途中でぼんやりと「いつセックスが始まるのかな」と考えて我に返る。違う。これはパロディAVではない。最初は大丈夫だったのにホークアイ中尉がどうしてもコスプレっぽくてAV感がある。幸いちゃんと演技力のある面々だったのでAV感からは脱することができた。

 

 やり取りの中で大佐が「軍に逆らうのか!」と真面目な、きつい口調で言った。大佐そんな真面目じゃなくない?「ほう、君は軍の狗でありながら軍に逆らうのかね?」って言うでしょ。この辺りは意見の相違だと思う。女たらし感もないのでなんか違うなぁといった印象。

 

 突然、めちゃくちゃかわいい女の子が登場した。ウインリィだ。かわいい。本田翼が演じている。この映画、とにかく本田翼がかわいかった。短いスカートを履いて動くとドキドキするし、タンクトップ(?)を着たり、なかなか似合わないようなワンピースをばっちり着こなしたりと視聴者を飽きさせない。とにかくかわいい。演技もしっかりしているし、キャラデザ(?)的にも茶髪なので違和感のない感じに仕上がっていた(もう全員茶髪か黒髪でよくない?)。全然知らなかったがファンになる勢いだ。ただ、問題とすれば、絵面的に画面に華が必要だという理由だと思うがエドとアルの旅に同行したりする。「それ同行すんのめっちゃ危険じゃない?」見たいなシーンが多々ある。原作ファン的に「それエドだったらウインリィの身を案じて絶対リゼンブールに帰すでしょ」という思いと、現実的に「そりゃ漫画はモブ!オッサン!筋肉!みたいなシーン多々あるけど映画は普通そんなわけにいかんわな」という思いが交差して非常にもどかしかった。「それ一人にしたらダメじゃない?」というシーンで1人にされたりもするのでウインリィの扱いが何とも。でも本田翼がかわいいので仕方ないとする。

 

 ホムンクルスが出てきた。ラストがめちゃくちゃハマってる。年齢的にはたぶんもうちょっと若い方がいいのかな、という思いもよぎったがハマっている。めっちゃ美人。後で松雪泰子の年齢を調べたら45歳。うそでしょ。ラストの使い勝手がいいのか、この映画はラストの登場が多い。しかしハマっていることに加えて演技力も抜群なので「これはラストだ」と違和感なく認識できる。気になる点としては、指の挙動がちょっとイメージと違った。アニメの挙動と違うのでそこはまぁ仕方ないのかな。もっとスパッと動くイメージなんですよね。

 

 グラトニーはどう見てもネタ枠です本当にありがとうございました。

 そこCG使うとこだろ!というところで遠撮にして無理やりやってたので思わず笑ってしまった。絶対笑い取りに来てるでしょ。

 エンヴィーは原作にある髪の広がりをなくしたのはよかった。たぶんあれを実写でやるととんでもないことになってしまう。結構エンヴィーもはまり役だったと思う。

 

 ヒューズ中佐が出てきた。わかりやすい。ヒューズ中佐だ。実写化に伴ってさわやかさが5割増しになっているがヒューズ中佐だ。ナイスキャスト。違和感があまりない。

 

 ロス少尉。説明がある前から「ロス少尉かな?」とわかる。雰囲気が似てる。キャスティングがすごい。

 

 そして、公開前から話題になっていた大泉洋演じるショウ・タッカー。

 予想はしていたがどうしても水曜どうでしょうが頭をよぎる。大泉洋が眼鏡かけてるだけなんだもん。演技はばっちりのはずなんだけどいつ

「ぼかぁね、年に1度の査定をクリアしたいっつってるだけだろぉ!?」

「なぁにを怒る必要があるんだ。医学だってそうだろぉ?人類の進歩は無数の人体実験のたまものなんだよ!君も科学者ならわかるだろぉ藤村君」

とかやり始めるのかひやひやしてしまった。演技はばっちりなのに。

 ちなみにこの映画、大泉洋愛が結構強い。出番が多い。

 オリジナルの行動をとったりするが、残念ながら行動の理由がわからない部分があった。やる意味も分からないし、原理もわからないみたいな部分があった。そうなった理由はたぶん尺の問題だと思うので仕方ない。

 

 映画が原作という大地から少しずつ離陸していく。ストーリーのオリジナル度が増していく。僕は思う。「あれ、僕見る映画間違えました?これカプコンのゲームの実写化でしたっけ?」

いいえ、ハガレンです。

 

 途中、エド機械鎧を外すシーンがあるのだが、「いやそんな外し方!ちぎってるじゃん!機械鎧ぶっ壊れてる!」→「なんでいつの間にか動いてんの!」となるので必見。

 機械鎧ってレバーで外すんじゃなかったっけ?

 

 あと、「さっきまでそこめっちゃ敵倒れてたと思うんだけどすげー綺麗に掃除されてない?」みたいなところもぜひ見てほしい。

 

 この映画全体を通してだが、エド何もしてなくない?という印象が強い。

 とりあえず身内と敵をひたすら殴り、よく連行され、思い通りにいかないことがあったら怒鳴り、必要なものは他の人から提供してもらっていた。これでいいのか主人公。ただのやばいやつでは?

 

 ちょっと鼻についたところがあるとすれば、第2作目を意識した作りになっていること。ないから!無理だから!(と、見たときには思っていたけど滑り出し好調なので分からないかも・・・?)

 

 全体的に内容として錬金術云々の説明がどうしても少なかったり、物語の背景の積み上げが少なかったりした。ハガレンを見たことがない人はわかるのかなぁと不安になった。

 

 

 とまぁ、色々と好き放題書き連ねてきた僕だが、原作と実写映画は直接の相関がないものだととらえている。予想通り大爆死だとしても、「実写化クソだったね」という話になるだけで、原作の価値に変わりはない。面白かったとすれば「実写も意外と面白かったね」となる。ここに原作の話は介在しない。感覚とすれば公式アンソロジーコミックを見ている感じに近い。なのでフラットに、単純に映画を楽しむことができる。

 

 ということで、劇場版ハガレンは思った通り最高だったのでぜひ視聴していただければと思う。

 過去、「バカが集まって頭脳戦をやる」と揶揄された某漫画実写映画を見て「マジクソ!」と思った僕だが面白かった。

 

 僕よりもハガレンに詳しい人の感想を見てみると、マニアにしかわからないような細かいこだわりが散りばめられているようで、映画的にも高評価であった。

 1ファンとして不満な部分もあったが、強い愛を感じられる部分もあった。

 

 まさかの映画興行収入ランキング1週目1位を獲得しているので、製作費<収入という等価交換の法則を打ち破ることができるかもしれない。

 

ちなみに、話題の0巻、映画を見終わってから読んでみると「うおぉぉぉ荒川先生すげえぇぇぇ!!!」となるのでおすすめです。